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「革命前夜」by 須賀しのぶさんの小説を読んで思ったこと。

「革命前夜」by 須賀しのぶさんの小説を読んで思ったこと。

久しぶりに読み応えのある小説でした。

 

⇒ 文春文庫『革命前夜』須賀しのぶ

 

こんばんは、三浦です。

 

ここ半年、いつもの半分以下の読書量だった僕。

 

理由はご存知、YouTube研究に時間を費やしてたから。

 

 

やっぱ、時間は有限だ。。。

 

何かに投資したら何かを犠牲にせざるを得ない。。。

 

 

でも、このコロナの影響により比較的時間ができたのとなんとなく

外界が不毛の論争で煩いので小説の世界観に浸りたくここ1週間は小説を読む機会が増えております。

 

この本は昨日読破。

 

これで1週間で小説は3冊読み終えたことになります。

 

中でもこの本は群を抜いて別格に面白かった。

 

いやあ・・・素敵な小説でした。

 

読み終わったのは深夜の1時くらいでしたが読後感に浸りまくって

ウィスキー飲みながら1時間くらい放心してしまった……

 

 

なんとなく聞いたことある人だったけど初めて

「須賀しのぶ」さん作品デビュー。

 

ある書店で激推ししてたので買った

 

「革命前夜」

 

ただ書店が推していたからという理由だけで中身を吟味せず購入。

 

いざ読み始めたところ(コロナ前)、お約束の

 

「テーマはクラシック音楽か……」

 

と、勝手に拒否反応を示しすぐに本を閉じたのが数ヶ月前。

 

 

ただ、先日もお伝えした通り書店が今やってないしAmazonで無作為に買うのもまだ慣れてないため、

 

「これしか残ってないか……

 ま、しようがない 読むか」

 

と、軽い気持ちで読み始めた自分を恥じたい。

 

 

一気に、須賀しのぶさんの世界にのめり込んで行きました。

 

 

この作品を読んでまた思ったこと。

ーーーーー

最強の情報発信者は、

読者さまの興味のないジャンルを振り向かせることができる。

最初から興味のあるテーマは誰だって振り向かせることは簡単。

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ということを再認識させて頂きました。

 

いやいや、、まだまだだな、、俺。。

 

この本を読んだ後、すぐに彼女の違う本を購入。

 

(さすがにそこはAmazon 笑)

 

 

ヒトラーから始まり、戦後のドイツ統一までの歴史にすんげえ興味を持つことになりました。

 

 

・司馬遼太郎さんの龍馬が行く!から幕末に興味を持ったこと、

 

・吉川英治さんの三国志で中国史に興味を持ったこと、

 

・キングダムでさらに中国史に興味を持ったこと、

 

・新田次郎さんの武田信玄で戦国時代に興味を持ったこと、

 

 

それと同じ感覚で今僕はヨーロッパの歴史に飢えております。

 

 

と、表層的なことだけだと、なんのこっちゃ?てな話だと思うので

 

少しだけ中身のレビューから再び僕の小説に対しての想いをお伝えしたいと思います。

 

 

お付き合い頂けましたら幸いです。

 

 

主人公の眞山柊史(まやましゅうじ)は幼い頃からピアノの才能があった。

 

そんな彼が、昭和から平成に変わった日から

東ドイツの音楽大学に留学することになる。

 

アテンドしてくれた外交官の方から

 

「こんな日から留学なんて

 運命ですね」

 

と言われるが、本人は全くそんなことは考えてなかったけど

 

その言葉が現実となっていくことを否が応でも後で知ることになる。

 

 

(本来、東ドイツ・西ドイツという言い方はNGですがここは説明を簡略化するためにお許しを)

 

 

家族だけでなく皆んなから

 

「なぜ、東?

 西の方が安全だし栄えているじゃん?」

 

というツッコミを完全無視して東ドイツへ。

 

そこは僕も余り詳しくないが、主人公の大好きなバッハは西じゃなくて東の地域だった模様。

 

また、西の方が戦後の日本のように発展が早かったものの

ドイツ本来の音楽の良さもなくなったの対して、

 

東は最後まで昔のドイツ音楽の良さが残っているという理由からも東へ留学を決める。

 

 

これは、僕がサラリーマン時代、ヨーロッパの風景を撮影するときに

フランス・パリじゃなくチェコに行ってたのと感覚が近い。

 

「古きよき文化・歴史が残っているところ」

 

 

日本はバブル全盛期の平和ボケの中、当時の東ドイツはシュタージ(国家保安省)という名の

ナチスのゲシュタポみたいな存在が普通にいた時代だ。

 

国の悪口を言ったらスパイが国にチクリ、シュタージが捕まえるか

いつの間にか会社の解雇や学校の退学が普通に行われる。

 

周りのヨーロッパ諸国がどんどん民主化していくなか、

東ドイツだけは最後の最後まで共産圏としての支配政治を行っていた。

 

 

だからこそ、民衆たちは「音楽」を拠り所にしていたところもある。

 

 

その留学先で主人公はたくさんの同世代に出会う。

 

東ドイツよりも先に民主化に成功したハンガリー出身の天才ヴァイオリニスト。

 

彼とは対照的な秀才肌の東ドイツ出身のヴァイオリニスト。

 

他にも、北朝鮮からベトナムからの留学生も。

 

そして主人公が惹かれる、亡命を虎視淡々と狙っている謎多き美しきオルガニスト。

 

 

そんな個性溢れるキャラクターと織りなす群像劇的な一面と

国が新しく生まれ変わろうとしている時代の節目の熱、、

 

色んな要素で僕はこの作品の世界にのめり込んでいった。

 

 

未来への不安、国への怒りはある意味今のコロナにも通づるものがある。

 

当時の東ドイツの混迷、西への憧れ、、ただ他国に置いてかれながらも守ろうとしていたプライド、、

 

そこで「音楽」を通じて成長・挫折する若者たちの葛藤をぜひ味わって欲しいです。

 

 

ここで一回帯に書いてあったコピーを。

 

【歴史】×【音楽】×【青春】

絶妙すぎるバランスで読者を物語の世界へ引き込む

「圧倒的エンターテイメント」

 

そして同じ表現者として1番驚いたこと。

 

この作品の凄いところは、全く知らない曲、

 

<バッハ「平均律クラヴィーア曲集」第一巻>

 

とか言われたって、知らんがな てな感じで突っ込みたくなるところ、

なんとなく文章を読むだけでその音楽の世界観に浸れるところだ。

 

後で知ったが、作者の須賀さんは全くピアノが弾けないみたいだ。

 

やったこともないみたいだ。

 

 

それでこの表現力は恐ろしい。

 

 

また、当たり前だけど取材でドイツに行ったかもだけど

当時のベルリンの壁崩壊時にそこにはいなかったはず。

 

 

なのに、なんでこんなに鮮明にイメージできるような文章が書けるのか・・・

 

恐ろしい。

 

きっと半端ない取材(リサーチ)と「書く」と決めたことへの執着、

 

思考する力・考え抜く力を日々磨きまくっているから成せる技だと思う。

 

 

この須賀さんの筆力をぜひ味わって欲しいです。

 

 

「小説なんて読むのは時間の無駄」

 

 

と思う方は多いかもしれない。

 

だけど、発信力や表現力を身に付けたかったらやはり

ビジネス書やコピーライティングの本だけじゃ無理だ。

 

リアルな最高の表現者が描く小説で堪能して欲しい。

 

そして盗める表現はどんどん盗んで欲しい。

 

今回の巻末の「解説」は僕の大好きな朝井リョウさんが担当しているが

 

(桐島部活やめるってよ・何者・スペードの3など名作多数)

 

彼女はインタビューでこんなことを言ってたらしい。

 

主人公の眞山は完全に留学先でスランプに陥るが
実は私もこの作品を書くまでスランプに陥っていました、、

上手く表現できない=上手く音を出せない

だから眞山と自分を重ね合わせて書いたところがとても多いです。

それが逆に良かったかもしれません。

 

結果、この作品で彼女は見事にスランプを脱し復活を成し遂げ

 

大藪春彦賞を受賞した。

 

 

・・・本当にスランプだったのか??

 

ヤバイぞ この作品。

 

 

スランプ時に書いたと聞いて、須賀さんとこの作品をより好きになった。

 

 

こんな素敵な小説を書ける人だって天才じゃないんだなーって。

 

 

そういう意味でも勇気をもらえる作品です。

 

 

ぜひ。

 

⇒ 文春文庫『革命前夜』須賀しのぶ

 

 

あーーーなんかこの名作をこんな表現でしか伝えられない俺がマジでダサい。

 

 

日々修行です。。。

 

 

ではでは……

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